視線

5/9
前へ
/62ページ
次へ
「ホラあの人!水泳部のエースなんだって!」 「え~超~カッコイイ~!」 体験入部期間とゆーものがある。 一週間の期限付きで、いろんな部活を体験したり、見学したり。 たくさんの入部希望者を得るため部は異常に意気込む。 「間宮、女子部のために、一肌ぬいでやってくれ!」 「なに言ってんすか、先輩…」 女子部は部員が少なく、今年に賭けているらしい。 「おまえがあの女子達を誘えば、入部してくれるハズ!さらにその女子達の多さを見て、男子も入ってくる!一石二鳥だろ~?」 アホな先輩をもつと、後輩は苦労する。 「いやっすよ、おれ。そんな面倒クサイ事。」 「そんな事言わずにさ~!まあ、何もしなくても、おまえ目当てで入ってくるのは数人いるだろーけど。」 そんなヤツを入部させて、なんの実りがあるんだ。 おれは女共と先輩にイラだちを覚えながら、プールに飛び込んだ。 水のなかは落ち着く。 静かで、落ち着く。 深く。 深く。 堕ちていく自分が、孤独である事が心地イイ。 おれは、水の底から見上げた時のぼやけた太陽の光が一番好きだ。 優しい光。 静かで、落ち着く。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1597人が本棚に入れています
本棚に追加