不良少年

6/115
前へ
/115ページ
次へ
ぱたん、と靴箱を閉めて「そうだよな、よく間違うんだよ」と。…さっき出席番号1番違いって言って自分の記憶力自慢してなかった? 私の疑惑の視線に気付かない彼は靴箱を開く。そして靴箱の中に入っていた紙の束をバッグに突っ込む。 その時ヒラリと落ちた1枚の封筒。パステルピンクの封筒に、同系色のハート型のシールに女の子の名前。 「ラブレター?」 意外とモテるんだ、なんて思いながら手紙を拾って渡そうとするとひったくられた。 「よく見てみろよ、ホラ」 封筒の表には『福田カズミ先輩へ』と。 「告白する勇気のない女子が何故か俺の靴箱に入れてくんだよ。直接兄貴の靴箱入れりゃいいのに」 ちょっと不機嫌になってそう言う。やっぱり比較の対象の先輩の事、嫌いなのかな? 「福田君はお兄さんと仲悪いの?」 私の問いに、私の顔を見ながら答える。 「ううん、兄貴は大好きだよ。カッコいいし、色々教えてくれるし、自慢の兄貴。俺が嫌いなのは、兄貴と俺を比較する奴や、兄貴目当てで近付いてくる奴」 ドキリとした。自分だって、もしかして心の奥底では先輩と近付く為とか考えてなかった…?
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加