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そんな私に全く構わず、靴を履いた福田君は「置いてくぞ」なんて言ってる。表情は元の上機嫌なものに戻っている。
「待って」
反射的にそう言って慌てて靴を履いた。
昇降口を出てふと気付く。
「今日は登校してたんだね」
前を歩いていた彼は振り向いて、私の横を歩く。
「今日も、だけど。毎日登校してるよ、俺。健康優良児だもん」
にっ、と私に笑いかける。ちゃんと瞳を見て話すんだ…。ちょっと意外。
「じゃあ何で教室来ないの?」
わっ、睨まれた!
「俺が嫌いなのは?」
「あ…」
そっか、福田先輩は初等部でも有名だから好奇の目に晒されるのは当たり前だよね。
「俺、勉強好きじゃねぇし、協調性ねぇしスポーツは好きだけど兄貴には及ばねぇし。兄貴には何でも勝てねぇんだよ。そうすると周りは言うんだよな。お兄さんはああだったのに、って。もううんざりだよ」
視線を外す彼の瞳は冷たく冷めていた。その表情がなんだか寂しげで…。
「んっ?」
彼が驚いた声を上げた。そうだよね、いきなり手を握られたら…。
「福田君は福田君だし、先輩は先輩。それで良いじゃん。気にしちゃダメだよ」
私も彼の瞳を見て言うとムッとしたようだ。
「同情なんていらねぇよ」
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