自傷の噺

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キリキリキリキリ…。 カッターナイフの刃を伸ばす。薄暗い部屋の中、カーテンの隙間から漏れる月明かりだけがこの部屋に唯一ある光源。 その月明かりにカッターナイフが照らされる。 刃渡り15センチ強。家庭的な、普通としか形容できないような一般のカッターナイフ。コンビニで300円出せば買えるような代物のお手軽な凶器。 私は長袖のセーラー服を乱雑としたベッドの上に投げ捨て、中学の入学とほぼ同時期に親が買え与えてくれた大きな鏡の前に立った。 青白く、薄暗い部屋に病的なまでに白い私の体が鏡の中に映し出される。それをボゥと暫く眺めてカッターを足元に刃を出したまま落としてから私はスカートに手をかけた。フックを外してジィィと、ジッパーをゆっくりゆっくりと下に下ろす。何かにぶつかる感じがして、ふと、指の動きを止める。手を離すと、ストンとスカートが足元にこぼれ落ちた。 まるで、濡れているかのような長い黒髪に手をそっと触れてみる。今日の髪型はツインテール。その髪を縛っている焦げ茶色のヘアゴムを外して、スカート同様、足元にポトリと落とす。縛っていたせいで髪が真っ直ぐ下に落ちていなく、四方に跳ねていたので、その散らばった髪を手櫛で整える。
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