自傷の噺

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暫くして、綺麗なストレートヘアに固まる。 背中の肩甲骨の下辺りに髪の毛の先が当たってチクチクとしたが、不愉快には思わなかった。 改めて、自分の全身像を見つめ直す。 長くのびた黒髪。鎖骨や肋骨が影になって浮かぶ、華奢で痩せ細った身体。胸の隆起はまだ小さく、幼い胸に、まだ必要ではないのではないかと思えてしまうような小さく、白いブラジャー。くびれと言うか、ただ痩せているだけなのか分かりにくいお腹の真ん中に凹んだ影。ゴムの上に小さなリボンのついた、これまたブラや肌の色と同じ、若干ふっくらとした生地で出来たパンツ。パンティと呼ぶには相応しくないだろうと私は思う。 そして、肌や下着の色とは正反対の黒いハイソックス。それが包み込む足は、細すぎて腿と、足首の太さに違いがあまり見られなかった。 誰が見ても、貧弱な体としか思わないだろう。貧弱で虚弱で脆弱で。今にも爽やかな春のそよ風で空の彼方へと吹き飛ばされると思うだろう。 それほどまでに肉付きが悪い。人より多く食べているのに。 私は床に落としたカッターナイフを拾う為に前屈みになって拾おうとして、チラリと鏡を覗き込んだ。胸の谷間なんて気休め程度にもありはしなかった。
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