自傷の噺

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私だって、花の十代なのだ。胸が小さいことや、痩せこけている事を気にしている。毎日、朝から牛乳をいっぱい飲んでいるし、チーズだって人並み以上に食べているのにさっぱりと成果は現れない。それが悔しい。 カッターナイフを拾って、右手で弄んでから漸く刃を左手首に向けた。 青白い血管が白い肌に浮き出ている。それはとても艶かしく、また、美しくもあった。 下唇を噛んで、意を決した。足元に散らばっている服などを足で払い退かして、周りに一切のモノを置かないようにした。 額から汗が流れ落ちる。その汗は、こめかみを、頬を顎を、首筋を鎖骨やブラと胸の隙間を、お腹を、臍を舐め廻すかのように流れて、最後にパンツに染み込んだ。そして、下腹部から股の関節をスチームで蒸したかの様な暑さが覆い、そこから臀部を、太腿を、膝を、ふくらはぎを、足首を伝って足の甲と踵に枝分かれして踵と足の指先から汗が床に垂れた。 床は既にまるで失禁したかの様に汗が溜まっている。いくら閉めきった換気の悪い部屋だからってこればかりは常軌を逸していると感じた。 自然と息が荒くなる。鏡を見ると、頬も少し赤らんでいた。汗のせいで髪が肌にぺたぺたと貼り付く。
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