食人鬼の噺

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ある男の話をしよう。 そいつは人喰いだ。 読んで字のごとく 人を食べる。 旨い不味いのの問題じゃない。 道徳的な問題じゃない。 宗教的、娯楽的、感情的、倫理的、論理的、科学的、肉体的、精神的、 この世にありふれて洪水を起こしそうな程存在する言葉では形容、及び説明、又は解説は出来ない。 断言しよう。 あいつに人間の常識は通用しないと。 言えることは、そいつは食人鬼だという事だ。 それ以外の事は誰にも理解できないだろう。 ある日、その男の前に一匹の少女が現れた。 普通は一人と数えるものなのだろうが、その少女は人間と呼ぶには相応しく無いニンゲンだった。 いや、確かに生物学的には人間、ホモ・サピエンスなのだが…。 諸君に問おう。 壊れた洗濯機、いや、洗濯機を構成する部品だけが目の前にポンと出されたとしよう。 諸君はそれを洗濯機と呼ぶだろうか。 いや、洗濯機じゃなくとも、なんでもいい。 とにかく、その少女は、人間であるに相応しい素材を全て備えているにも関わらず、素材だけで、キチンと組み立てられているわけではなかった。 何かが壊れていた。 だから、それを人間と呼ぶには相応しくない。 ヒト、ニンゲンと称するべきだろう。
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