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さて、ここでこの食人鬼はどういう反応を起こすのだろう。
因みに腹は減っている。だらしなく涎を垂らしながらその少女をジッと見下ろしている。
ただの人間でも、殺気というものを感じてすぐさま逃げ出すだろう。
しかし、少女は逃げ出さなかった。
何故か。
壊れているからだ。
少女の齢は十四。
真夜中の森で、大の大男(まだ言っていなかったが、食人鬼の体長は、2メートルを越えているのだ)に遭遇したら、まず貞操の危険を感じるだろうが、その少女は逆に食人鬼を見つめていた。
二人はお互いを見つめあう。ただただ感情の無い目で見つめる。それはただ、網膜に姿を映すだけの単純かつ明解な作業だ。
一体何時間その状態を保っていただろうか。
先に視線を切ったのは食人鬼だった。
食人鬼は少女がまるでいなかったもの様に立ち去っていった。しかし、その背中は、まるで少女についてこいとでも言っているかのように見えた。
少女は食人鬼の後についていった。
それから、少女と食人鬼の奇妙な生活が始まった。
食人鬼は人間を殺して喰う。少女もそれにならって喰う。二人は一切言葉を交わさずに生活していた。だが、寝るときだけは、お互いの体温を求めて、寄り添って、
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