食人鬼の噺

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気付いたハンター達が追いかけて来る。食人鬼達は全力で走った。走って、走って、走って、走った。だが、ターン!と、乾いた音が食人鬼達の後方から響いた。そして、少女はその土と血で汚れた腹から大量の血が溢れた。普段から人間を殺して暮らしている二人だ。もう助からないことは一目瞭然だった。少女は息を切らしてその場に倒れた。後ろからやったという声が聞こえる。どんどんと相手は近づいて来る。食人鬼は涙を流した。少女も泣いていた。しかし、壊れた二匹は自分達の目から零れ落ちるソレの意味を知らない。食人鬼は咆哮した。全員血祭りに上げると心に誓った。食人鬼に心の概念は解らなかったが、しかし、その胸に確かに決意した。食人鬼はハンター達に撃たれながらも怯むこと無くハンター達を殺した。肉を裂き、腸を引きずり、血を撒き散らし、脳を砕き、骨を潰して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺した。 暫くすると、立っているのは食人鬼だけだった。ただし、満身創痍の食人鬼の残された寿命は、僅かだった。食人鬼は少女のもとに引き千切れそうな足を引き摺って歩いた。少女の体は既に冷たくなっていた。その、華奢で冷たい少女の体を抱きしめて、また、泣いた。 泣き止むとほぼ同時に、食人鬼は絶命した。 食人鬼は、最後の際、人の心を持っていただろう。二匹がしてきた事は赦される事ではないだろう。しかし、「二人」の人生の終わりまでの僅かな時間はとても幸せだった事は言うまでもなく、寄り添った「二人」の体からは堕ちる夕陽に当てられて、長く長く、重なった影が延びていた。
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