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「ちょっと休憩しようか」
カメラマンは納得いかないといった顔でカメラのレンズを覗くのをやめた。
「はい」
どうしよう、自分が不甲斐なさ過ぎてこの場から逃げ出してしまいたい。
スタッフに誘導されてパイプ椅子に座ると遥さんが穏やかな笑顔で缶に入ったココアを私に差し出した。
「ありがとうございます」
ココアは神だと思う。
こんな私にも甘くてまろやかな口当たりなのだから。
「可愛かったよ律ちゃん、そんな悲しい顔する必要ないって」
遥さんはそう言ってくれるけれど励まされると尚更惨めた。
私は無言のままココアを何回か口へ運んだ。
「楽しみだね雑誌が発売されるの、相瀬君の目にも入るんだよ、何て言ってくれるだろうね?」
相瀬君の目にも入る…私の顔は思わずほころんだ。
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