桜の木の下で

読者モデルの撮影

「お腹が痛いのでトイレに行かせてください」
と中学生にもなって授業中に言うのはあまりにも恥ずかし過ぎる。
トイレで用を済ませると先程までの腹痛は一気に治まったけれど、保健室へ行くと言って出てきた手前、やはり行かなければならない。
遠くのグラウンドから聞こえてくる、はしゃいでいる女子の声、どこかの教室から微かに聞こえる英文を読む先生の声…。
私は手を洗いながら、何だか心地が良いその声達に耳を傾けた。
授業中だから廊下は人の気配が全くと言っていい程にない。
このトイレの前を通るのも、生徒の上靴の音とは全く違う先生のスリッパの音だけだ。
…と思っていたのが間違いだった。
濡れている手で髪の毛を押さえながら、トイレから出た私が元来た教室の方に目を向けると、丁度彼女が歩いて来た。