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「どうしましたか?」
私に気付いた先生は包み込むような柔らかな声でそう聞きながら、久しぶりねといった表情をした。
「えと…お腹が痛いです」
私は、もう何ともなくなった腹部を擦りながら答えた。
視界に入ってくる明ちゃんの後ろ姿は相変わらず肩を震わせ、私の声に気付いているのかいないのか分からない。
カリカリカリ…とリズムよく紙の上を滑らせる万年筆の音で私は目を覚ました。
「ベットに横になって様子をみてみましょうか」
と言う先生の言葉を受け私は横になり、そのままいつの間にか眠りについていた。
寝ぼけ眼のまま、糊付けされた掛け布団を口元まで上げると、その心地よさを楽しむ。
寝返りを打ち横向きになると、カーテンで仕切られた向こうから微かな寝息が聞こえる。
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