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「あ、流れた」
凛が僅かに笑みを浮かべる。
小さな水滴が木の葉から転がり落ちるような、はかない流星だ。
「うん」
ぼくは短く答える。
凛は、ぼくの手を握ったり撫でたりしながらこちらを向いた。
「貧相ね」
「え?」
ぼくは、主語を失って空間を漂う短い言葉を捕まえようとした。
「ひろしの手って何となく貧相なのよ」
「なんだ。手のことかあ」
確かにぼくは生まれながら骨が細く、体つきも華奢である。掌も薄く指の一本一本が節くれ立っている。
「私、ひろしのような手を握ると愛おしく感じるの」と凛が澄んだ声で言った。
「貧相が愛おしいの?」
凛は小さなあごでコクリと頷く。
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