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「和泉君…聞いてくれる?」
「はい」
帰宅の車は、和泉の運転。
二人きりの車内で、シュウはポツリポツリと話始めた。
その目は遠くを見ていた。
その、告白を和泉は黙って受け取った。
「この前ね…、女の人が…シンの楽屋から出てきたの」
その日、シュウはシンを少し驚かすつもりで、こっそり楽屋に向かった。
楽屋から声が漏れる。
内容は淡々としていて打ち合わせのように聞こえた。
シュウは邪魔にならないように、部屋には入らず、離れた所で待つことにした。
そして、ドアが開いた瞬間…
「え…」
シンと一緒に出てきた女性に、目を奪われた。
その目は赤く腫れて、少し泣いた後のようだった。
「あ…」
声が出ない。
その人はシンに肩を抱かれて、うつむいた。
言葉の出し方が解らない。
言葉が見つからない。
しかし仕事という印象が、全くない。
(まさか…シンの彼女?)
こんなに嫉妬心を意識したのは初めてだ。
黒い感情が支配する。
その時。
「シュウちゃん、彼女は御輝さん。僕と同じ、スタイリストだよ」
そう言って、シュウの手を握ったのは、シュウ専属スタイリストの里宇だった。
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