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果ても見えない大洋の、只中に浮かぶ船の上。
「…今日は随分と早いんだね」
厚手のタオルで身体を拭きながら、茜の髪の少女━━シイナは一人ごちた。
正確には独り言ではない。彼女の話し相手はその耳に下げられた装飾…通信機の向こう側にいる人物だ。
『この辺りは潮の流れが変わりやすい。それと…そろそろ“時期”だからな。
大事に越した事は無いだろう』
どこか感情の薄いその返答に、しかし彼女も異論は無い。
「彼」はシイナの命綱だ。
『…ついでにもう一つ、イレギュラーだ。拾い物がある』
続いた台詞に、少女は目を丸くする。
とりあえず戻って来い、と締められた言葉に従い、シイナは小さな甲板の隅にあるハッチを開いた。
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