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物みたいに言うな、と、うつ向いたまま子供が吠えた。
「板切れ同然のイカダにボロ布宜しく引っかかっていたモノを表すには、拾い物で充分だと思うが」
「…ユタカ、言い方って物があるよ」
彼はもうこちらも見ていなかった。
ふぅと一つ息をつき、改めてシイナは子供に近づく。
目の前にしゃがみ込み、こんにちは、と声を掛けてみた。
「………」
「どこか、痛い所とかはない?」
次いだ台詞に、子供はのろのろと伏せていた顔を上げる。
本当に幼い少年だった。ユタカが18歳だと言っていたから、それより十程は下であろうか。
「……だい、じょうぶ」
間を置いてぶっきらぼうに返された言葉に、シイナは柔らかく顔を綻ばせた。
そのまま、少年の榛色の目を透かす様に覗き込む。
髪の色を丸ごと映した様な紅い瞳に見つめられ、彼はしぱしぱと瞬いた。
「━━うん、わかった。でも少し疲れてるみたいだね…向こうで、休もうか」
「……ん」
軽く手を取ると、少年は覚束無さげながらも自力で立ち上がった。
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