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「…どうやら、すっかり拾い癖が付いてしまったらしいな」
ポツリと操縦席でこぼされた青年の台詞は、今しも少年を導いて通路へ消えたシイナの背中には届かなかった。
煎れたての茶の香りが、簡易寝台を設えた休憩室に漂う。
寝台の端に腰を下ろし、手渡されたカップの中を見つめていた少年はおもむろに、シオン、と名乗った。
「シオン、どうしてイカダで海の真ん中なんかにいたの?」
隣に座るシイナが投げ掛けた問いに、吐き出す様に少年は答えた。
逃げてきたんだ、と。
「…どうしようもなかったんだよ。陸続きの国が攻めてきて、海に逃げるしか、もう」
「……センソウ、?」
「…皆…一緒に国から逃げて…でも……っ!」
それきりカップを強く握り締め、黙り込んでしまったシオンの肩を、少女はそっと抱き寄せた。
優しく。優しく。
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