金色(こんじき)に口付けを

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僕は食堂車でボンヤリ、いつもの光景を眺めていた。 でも、確実に前とは違う感情でこの光景を見ていた。 今も、リュウタと先輩が言い争いをしてうるさいのに、静かに寝息をたてる君…。 君を見ていると、この、うるさい状況でも全然気にならない。 多分、君は暫くは目を覚まさないだろう…。 それがいつもの事だから…。 いつからだろう…。 前までは、全然気にも留めないどころか、どっちかって言うと、アウトオブ眼中ってヤツだったのに…。 何でかなぁ…? 暫く眺めて、僕は場所を変え、君の隣に腰を下ろした。 「金ちゃん…。」 小さな声で君の名前を呼ぶ…。 「大好きだよ…。」 周りの声でかき消される…。 でも、それでいい…。 たとえ、君の耳に届かなくても…。 「金ちゃん…。」 髪を撫でる…。 漆黒に金色のメッシュの入った髪がスルリと指の間を抜ける。 僕は、金色のメッシュの部分だけを触る。 金色、この部分が君だという証…。 僕は、金色の髪に口付けた。 それで十分…。 これをする事で君に口付けをした様な錯覚をして、満足できる。 なのに…。 なんかせつない…。 こんなに近くにいるのに…。 届かない…。 金ちゃん…。
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