2人が本棚に入れています
本棚に追加
僕は食堂車でボンヤリ、いつもの光景を眺めていた。
でも、確実に前とは違う感情でこの光景を見ていた。
今も、リュウタと先輩が言い争いをしてうるさいのに、静かに寝息をたてる君…。
君を見ていると、この、うるさい状況でも全然気にならない。
多分、君は暫くは目を覚まさないだろう…。
それがいつもの事だから…。
いつからだろう…。
前までは、全然気にも留めないどころか、どっちかって言うと、アウトオブ眼中ってヤツだったのに…。
何でかなぁ…?
暫く眺めて、僕は場所を変え、君の隣に腰を下ろした。
「金ちゃん…。」
小さな声で君の名前を呼ぶ…。
「大好きだよ…。」
周りの声でかき消される…。
でも、それでいい…。
たとえ、君の耳に届かなくても…。
「金ちゃん…。」
髪を撫でる…。
漆黒に金色のメッシュの入った髪がスルリと指の間を抜ける。
僕は、金色のメッシュの部分だけを触る。
金色、この部分が君だという証…。
僕は、金色の髪に口付けた。
それで十分…。
これをする事で君に口付けをした様な錯覚をして、満足できる。
なのに…。
なんかせつない…。
こんなに近くにいるのに…。
届かない…。
金ちゃん…。
最初のコメントを投稿しよう!