塹壕戦

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 塹壕内では、血を血で洗う凄惨な白兵戦が繰り広げられていた。銃剣で刺し、ライフルで殴り、スコップで頭をたたき割った。  スチュアートは、少年時代に読んだ古今東西の英雄たちを称えた伝記を読み胸を躍らせた事を思い出した。本の中では、あんなに輝いて見えた戦いが目の前で繰り広げられている。しかしちっとも胸は躍らなかった。  「畜生のくそったれジャガイモ野郎め!!」    近くで新兵のロバート・ウィルクス二等兵が叫んでいる。ライフルを発砲するたびに叫んでいる。   「思い知ったか」   ダーン!!!   「皆殺しにしてやる」      ダーン!!!      二等兵は明らかに軍に入隊する前は決して使わなかっただろう言葉を叫んでいた。   「ベルリンまで蹴っ飛ばしてやる。」     部隊にやって来た時は、純朴そうなスコットランド人だった彼がこの言葉を覚えたのは徴兵された後だろう。
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