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ザァァァァアッ────…
美海は荷物を置いた後、ポツンと一つ立っている墓の前に来ていた。
静かに手を合わす。
墓には落ち葉が積もっている。すっかり秋だ。
芹沢さん。お梅さん。
お久しぶりです。
禁門の変には出られなくって留守番だったけど、足はようやく完治して今では沖田さんとまた巡回に回れるほどです。
最近は大きな出来事がなく平和ですよ!
土方さんイジメも毎日順調です。
芹沢とは芹沢 鴨といって、既に他界しているが新撰組の前局長であった。
昔、まだ新撰組が壬生浪士組と呼ばれていた時代は近藤、芹沢、新見という男が局長を務めていた。
新見は局中法度違反で切腹、芹沢は京都守護職、松平により暗殺の命が下り、土方、沖田、原田、山南に暗殺されたのだ。
お梅とは美海と仲が良く、芹沢とは愛人関係にあった。芹沢が暗殺された夜、芹沢を庇い、死んだのだ。
池田屋事変という事件があって、その時美海は骨折したのだが、なんとか完治したようだ。
禁門の変は池田屋事件の報復で起こった乱闘だ。
京は火の海になったが沢山の人々が消火活動に励み、何とか事は収まった。
「美海くんもここに居たんだ」
「山南さん!」
山南 敬助。
新撰組総長。
色白で小柄の愛嬌のある顔が特徴的だ。
学問にも優れていて誰にでも優しい。皆からはサンナンさんと呼ばれ、慕われている。
北辰一刀流だ。
山南は手に団子を持っている。
供え物のようだ。
山南も手を合わせ、祈っている。
しばらく立つと山南は顔を上げた。
「美海くん。帰ろうか。今日の夕食はなんだろう」
山南はニコニコとしている。
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