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証言力のある年齢の者達は最早、存在しなかったが遠距離の移動に便利な航空手段を封じられていた形跡からもブゥの推測は間違いないと確信された。
しかし、まずは得体の知れない相手よりも現状の打破である。不自然な形に区切られた二つの世界が一つになる事からしか更なる外部には向かって行けないと考えた。
きっと、最初は争いが立て続けに勃発するだろう。支配者と被支配者の関係が長かったのであるから。あらゆる概念に於いて対立する要素をはらんでいるのはブゥの生い立ちすべてなので理解に容易い。
それでも自分が壁を突破したように未来は切り開かないと始まらないという信念がブゥの中には形成されていた。目に映る壁面には等間隔で爆薬がセットしてあり、手元にあるスイッチが着火装置に連動していて自分がオンすれば一帯は瓦解する仕掛けになっている。配下として協力してくれている周りの者達にも全部説明済みで予想されるこれからの騒乱も、みな覚悟の上で賛成し今を迎え固唾を飲んで見守っている。
とはいえ、これまでは自身の命をかけて危険を冒して来たブゥだが、ここからは違う。初めて得た仲間や以前、同じ暮らしをしていた人々の運命を左右するのだ。躊躇いが震えを呼び手元に力が定まらない。
苦し紛れに目を泳がせるとソラァと視線が合った。彼女は微笑みをたたえながら静かに頷いた。
そうだ。自分の信じた方法で幸せへと導くしか道は無いのだ。
決意とともにスイッチを押した。 (完)
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