終わりの始まり あるいは..

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ブゥは長い年月をかけてコツコツと自分に貸与された車体をチューン・アップしていたのだ。ボディの細部は目立たぬように、一番手を幾度も加えて改良を重ねたのはやはりエンジンであった。結果、燃費・馬力ともに最初の状態とは比べ物にならない進化を遂げていた。ただ、それを周りに悟られぬように日々、抑えに抑えて使用していた。 もちろん、その技術は教えられた事ではなく幼少の頃にプログラムされたこの国の最低限の教育システムの中でこっそりと盗んで身につけたのだった。物心がつく時分には両親と引き離され、管理社会で生活してゆくマニュアルを植え付ける洗脳生活を施設で数年間送らされた慣習制度の中で円滑に作業を進める為の教科の一部であった農耕機器のメンテナンスにブゥは強い好奇心を持ち、テキストにある低レベルな次元に満足出来ず夜間に研究室と思われる部屋に忍び込んでは本来、読む事も許されない書物を月明かりを頼りに文字を漁り知識を吸収していたのだ。
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