パラダイス・ロスト

終わりの始まり あるいは．．

日々、確実に無理と判っていても壁に挑み命を落としてゆく数が絶えないニュースを聞き、許された範囲から様子を窺うのが日課になっている‘ブゥ’にも怯えが先に来るものの、その者達の心境がヒシヒシと伝わって来るのがこの世界の社会システムだった。

ブゥは親から受け継いだ、たいして広くもない土地で農作を行うのが生まれた時から決まっていて、収穫期になると自動的にすべてが統治している政府に徴収され見返りに決められた量の作物と限られた通貨が配給される。しかも生きて行くのに丁度の収益に計算されていて刃向かう事は脱出を図るのと同じ意味を持つ。

一定の年齢に達すると伴侶が与えられるが同じ生活の繰り返しを子孫に受け渡すだけで、自分に選択の余地などもちろん無い。ただ日々を送っているだけの家畜同然の暮らしで、まだ知りもしない“他の世界”への憧れは増幅するばかりだった。