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続けて博士はブゥが抱きそうな疑問を先読みして語った。
何度も定期的に薬品を注射することにより徐々に体細胞自体を変化させていくプロセスを限られた研究者だけに与えられた複雑なパスワードを入力し、モニターに呼び起こして説明してゆく。理論を細分化して積み重ねられると初めは非現実性しか感じ取られなかった内容も、いつの間にか理解してしまう程にブゥの知能は発達を遂げている。そして博士も強調したように、この制度は人々の価値観・及び倫理観・人生観の根底にあるテーゼから発しているのが揺るぎない事実であるらしい。
理屈ではブゥにもわかる。肉体の衰え、老いへの不安は生物として拭えるものではない。それを和らげる効果は歓迎されて然るべきだろう。しかし、それでもつい先日まで自身の体を頼りに働き成長を実感したり時々の調子を気遣う生活を送って来たブゥとしては、そこに人為的に手を加えるのは、にわかには受け入れ難い事には違いない。
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