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部屋に戻っても残像に支配されていた。ここを離れようと決めた時は、あらゆる面で行動は自分一人しか不可能だと割り切って計画を立てたのだが、クローンが連れられてゆく光景は心に芽生えたソラァへの想いをどういう結果を招くのかブゥに見せつけたのだ。
研究者の娘だから、それなりの身分の男性に嫁ぎ不自由無い生活が保証されているのだろう。だが、他の男に奪われるのを見過ごすなど出来ないと身が切り裂かれるように感じた。目覚めた本能は自由だけではなく愛情も求める気持ちも呼び起こしていたのだ。
だからといって、どうすればいいのか。頭を抱えながら計画を一から組み直し始めた時、ドアが開き博士が助手を従えて入って来た。
「私のノルマだった人数分のクローン育成の最終段階で忙しかったので見ない振りをしていたが君はずっと監視していたし、思考パターンから解析してもそろそろ何か事を起こす頃だと思っていたよ。どこかへ行くつもりだったんだろ?。」
すべては見通されていたのだ。助手は銃を構えている。博士は続けた。
「それは困るよ。なぜ私が危険を冒してまで君を匿ったかわかるかい?。あれほど果敢な行動衝動と類い希なる知能を持つ君の脳は学者にとっては願ってもない研究素材なんだよ。提供してもらわないと...。」
そこまで言うと入れ替わりに前へ出た助手が銃を突きつけた。
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