回想

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それ以降は誰もブゥを遮る者はいなかった。ほぼ成人に達している人々は博士と同じく薬の作用で気化してしまい、軍や政府の中枢は主の無い廃墟と成り果て、指示を待つだけの若年従事者は唖然とするのみで自ら行動わ起こす教育は受けているはずもない。 そのような状況下に於いてブゥは次々と研究所・軍施設・政府庁舎を機能停止に陥る程度に容易く破壊して行った。今後、必要と思われる機器・火薬類は持ち出し尽くし一旦、隠した。 次に取り掛かったのは寄りどころを失った民衆が捨て鉢な暴挙に走らないように最低限の統制を司る事だったが、これは思ったより順調に捗った。指揮されるのを待つしか出来ない者には目標を与えればいいだけで、見る間にブゥはトップへと祭り上げられた。もちろん独裁する気など微塵も無かったが目指す形に移行するには都合が良かったので、この体制を固めるのには慎重に時間をかけた。 そして一年を費やした結果、描いた通りの準備が整った。“始まり”の様子を眺める為に、この丘陵にいるのだ。
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