終わりの始まり あるいは..

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時間を作って度々ブゥは壁を眺めに行くようになった。警告を受けないギリギリの距離まで近づいては自分の思い描く自由を向こう側に夢想してはやりきれない気持ちに押し潰されそうになる程、高まりを抑えられなくなって行った。 仕事に戻っても上の空で虚しさに張り裂けそうな心を持て余しているのを自覚せずにはいられなかった。きっと命を懸けて越境を試み失敗した者達もこのような心境に陥ってしまったのだろうと身にしみて感じる。 そうなのだ。一度、このまま考える事さえ無駄だという諦めの生活など嫌だと思ってしまったのだ。もう以前の自分に戻るなど出来ない。未知なる希望に取り憑かれ壁を見つめる彼の眼差しは明らかに、いかにそれを越えて行くかという策謀のこもった光を携えている。
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