母親

3/9
前へ
/46ページ
次へ
「俺は逆に、年老いた気分だよ」 和夫がどこか遠くを眺めながら ぼそりと呟いた。 智子に言ったのではなく 自分の感傷に浸ったいる、といった感じであった。 「成長した2人の娘を連れて 昇進記念の家族旅行だなんて 絵に描いたような幸せだな」 しんみりと呟いた後、 柔らかい笑顔を智子に向けた。 「…な、智子?」 「そうね」 そう言って一瞬視線を合わせるが またすぐに娘たちを眺めた。 昼ドラのように熱いキスをするより よき母と父の関係でいたかったのだ。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

763人が本棚に入れています
本棚に追加