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「俺は逆に、年老いた気分だよ」
和夫がどこか遠くを眺めながら
ぼそりと呟いた。
智子に言ったのではなく
自分の感傷に浸ったいる、といった感じであった。
「成長した2人の娘を連れて
昇進記念の家族旅行だなんて
絵に描いたような幸せだな」
しんみりと呟いた後、
柔らかい笑顔を智子に向けた。
「…な、智子?」
「そうね」
そう言って一瞬視線を合わせるが
またすぐに娘たちを眺めた。
昼ドラのように熱いキスをするより
よき母と父の関係でいたかったのだ。
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