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雨…
雨…
静かに降る冷たい雨が地面を叩いて濡らしていく
しかし俺は濡れてない
上を見上げると俺を雨から守るように傘を広げて
どこかボンヤリと目の前にある建物を見つめるご主人さんがいる
あの家は俺達のいた家
でもいい思い出が1つもない
俺にもご主人さんにも
悲しそうというか不安を表すような青い瞳は動く気配がない
「うら?」
俺も不安になって思わず呼ぶ
ご主人さんより名前の方が嬉しいらしい
呼ぶと青い目が優しく細くなり俺を捉えた
「ごめん寒かったね帰ろうか?」
大きい手が俺の頭を撫でる
それが好き
「あの家には戻らないのか?」
そう聞くとご主人さんの目が変わった
聞いちゃいけなかったかな?
怒られると思い耳がピンとなる
恐い…ご主人さんに嫌われる
でも返って来たのは優しい手
耳や尻尾に温かさが広がる
「大丈夫だよ…」
ご主人さんの目が優しくなってる
「帰ろう?僕達の家に」
差し出される手が嬉しくギュッと握る
「本当に戻らない?」
「まっ葬式でもない限りね」
「葬式ってなんだ?」
「うーん死んだ人を悲しむ儀式かな?」
「うらも死んだら悲しむ儀式するのか?」
「そうだね多分…」
そう言うご主人さんはなんだか寂しそう
「大丈夫だ!うらは俺が悲しむ!」
ご主人さんが死ぬことなんか考えたくないけど
ご主人さんに寂しい思いをさせたくない
「ありがとう…モモ」
ご主人さんが優しく抱き締めてくれた
大好きな匂いにトロンとする
「でも駄目だな」
「なんで?」
「僕が悲しんであげたいんだ…だから僕に譲ってね?」
ご主人さんの顔からは寂しさは消えてた
「俺はどうすればいいんだ?」
死んだら悲しむ儀式しなくていいなんて
でも悲しまなかったらご主人さん寂しいだろ?
「モモには…笑って迎えに来てもらいたいから葬式はいいよ」
モモには泣いてもらいたくないからねと
ご主人さんは優しく手を握る
「仕方ねぇな譲ってやるよ」
俺もご主人さんに笑ってて欲しいから
「うんありがとう…今日はあの店のプリン買いに行こうか?」
「あぁ!」
ご主人さん!約束だぞ!
俺が死んだら悲しんでもいい
ご主人が死んだら迎えに行っていっぱい抱き締めてもらう
でもそうなるまで
そうなるまでは
ずっと俺と一緒だぞ!
「うら!ずっと大好きだ」
「ありがと…僕も大好きだよ」
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