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「ねぇ少しは聞いてくれないかな?」
「聞いてますよ…てか本当にキャラを裏切らないですね」
カウンターの向こうでカクテルを味わう男性
遊佐さんというのだが
声優さんらしい
俺の好きな漫画に出てるキャラの声をしてるようだが
漫画しか知らない俺にはピンとこない
でも…やっぱ中と外じゃあ違うようで
目の前にいるのは…
ただの人です
「俺の恋人さ…せっかく会えるのに拗ねて家に入れてくんないの」
話のネタは恋人のことだが
「薬指に思いきり指輪光らせて何言ってるんですか?」
この人は不倫中だ
しかも相手は男
「好きになっちゃったんだ仕方ないよ」
そういうことを隠すことなく話す彼に少し尊敬を覚えてしまう
「俺を見限ったのかも」
悲しい笑みを作る彼
まさしく大人の男
女性に人気出るわこれなら
「大丈夫でしょ?」
そう言いながら空いたグラスに手を伸ばす
すると
腕をガッシリ捕まれた
「なんか淋しいよ…」
力強い瞳が俺を見る
「一晩どう?」
女性は堕ちるだろうな
その最上級のエロい声で口説かれたら
なんて考えながら手を離してグラスを回収する俺
「ただのエロい声のおっさんに興味持てません」
「あらあらふられちゃった」
彼は爆笑しながら新しく出したグラスに口づける
単なるおふざけだ
昔はひっかかってよく馬鹿にされたっけ
思い出したら腹立つな
悔しいから意地悪してやる
「あんな芸人バリに弾けてるおっさんのどこがいいんですか?」
「ん~?」
反応今ひとつ
もう少し
「モモとアイビーに会えなくて淋しいんですか?」
ぐふぅ!
どうやら会心の一撃
彼は柄にもなくカクテルを吹き出し
咳込んだ
因みにモモとアイビーは彼の恋人の愛犬
「何で知ってるの?」
「ネットで見ましたよ愛犬家なんですって」
「そっちじゃないよ!!」
誰かさんのごとく突っ込む彼は物凄いおもしろい
そりゃあわかるよ
着信全部彼の着ボイスではないか
気づかれないと思ったのかな
「ただの勘ですね」
「すごいね…」
口を軽く拭うと誰かのように幸せそうに笑う
「全部かな?我が侭もいわれるけど許せちゃう…まぁそれは」
「惚れた弱味?」
「ないね…あっちが先に俺に惚れたんだし」
この前も聞いたな
「変な譲合い」
「んっ?」
「なんでもないです」
「そう?じゃあそろそろ会計して」
「はい」
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