絶望の始まり…

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 …とうとうやってしまった。僕は、茜の体を殺してしまった。きっと、茜は体に戻れば僕のことを忘れてしまう、だから僕は茜の体を殺した。  僕は茜の病室にはいり、首を絞めて殺した。今でも茜の首にはクッキリと跡が残っている。それは痛々しい跡だったが、茜の顔は安らかだった。もがき苦しむ事はなかった。何も抵抗せず、何も叫びもせず、ただ一生懸命呼吸をしようとする音だけが聞こえてた。  これで、茜は僕のものになったのだろう。これで、茜は体に戻れないと悲しむことはない。僕は僕のために、そして茜のために茜の体を殺したのだ。  「あ、あっ…」後ろから声がした。茜だ。僕は何も言わず彼女をみていた。彼女の顔は笑っていた。しかし、白く光一筋の涙が少しずつ量をまして流れていく。笑いながら泣いている。僕にはそれが嬉しいのか、悲しいのかわからない。ただただ笑いながら泣いている。声に出すことなく泣きながら笑っている。僕にはそれがたえられなくなってきた。僕のした事は間違っていたのだろうか?正しかったのだろうか?そんな思いがまわりにまわって僕は茜を残し茜の病室をでていった。  走りながら何故か僕は泣いていた。本当の事はこの涙が語っている。僕は間違っていたのだ。それを思った瞬間走っていられなくなり僕は座り込んでしまった。僕は間違っていた。あんなに必死に体に戻ろうとしていた彼女をみて、僕は同情していたではないか。どうにかしてあげたいと思ったではないか…。なのに僕は、そんな彼女の思いや努力をふみにじった。それどころか僕は取り返しのつかない事をしてしまったのだ。僕は自分のした行為と自分の事が許せない、茜にはもう会えないという思いでただただ泣くばかりだった。
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