哀しみの始まり…

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 彼女の名前は「茜」と言った。実は、前々から近所には住んでいたらしいが、やはりこの辺は人が多いせいか巡り合うことは今までなかったらしい。  茜の体はまだ生きている。僕は実体のない茜を連れてなんどか病院にも行った。彼女は何度か体に戻ろうとしたが、何度やっても元には戻れなかった。それでも彼女は笑顔で「戻れないね~。さて、どうしたものか!?」と手を腰にあてて言っていた。そんな彼女に同情をしている自分がいる。しかし僕にも、どうしようもできない事はあるのだ。僕は、ひそかに泣いている茜も知っているし、無理して笑顔の茜も知っている。でも、君はいつも僕の前では笑顔でいてくれている。僕がいてくれればいいと君は言う。そんな両方の思いを知っている僕のほうが滅入りそうだ。泣きそうだ。
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