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一貫は駆け出す。否、逃げ出す。
傘を放り投げ形振り構わず
胸の中の生き物をしっかり抱えて
大雨の中を
服が濡れる
靴が濡れる
形振り構わず逃げ続ける
しかし、耳元から聞こえるあの乾いた声
「いいか?」
木工ボンドのように貼り付く声
「青年のそれは単なる自己満足だ」
逃げる逃げる逃げる逃げる
「考えてもみろ?せっかく助かったと思った矢先、また捨てられる猫の思いを
青年に自覚がなくとも猫がそう思ってしまえば、『捨てられた』と言う事実はそこに生まれるんだ」
逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げ
「そんなことをしたところで過去は消せやしない、過去はそんなに軽いものじゃぁない」
「わかってる!!!!!!」
一貫は逃げるのを止めた
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