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「…ほな、ほな募集に寮完備て書いてあったのは間違いなんすか?」
ふと、我にかえる。
隣りに座る佑士はまたほほを真っ赤に染めている。
ずいぶん血の気が多いようだ。
説明会の後、入寮を希望する者への説明があると言われて、残ったのが俺と佑士だった。
「いえいえ、だから相談なんですけどね。
こういうのはどうでしょう」
事務局長は落ち着いて佑士の言葉を受け流す。
「この会社…病院で所有している物件が近所にありまして。
それを男子寮としてあなた方に使っていただこうと思っています。
どうでしょう?
普通の一戸建てだけど、二人暮らしには十分なはずですよ」
…二人暮らし?
思わず隣りを見やると、向こうも同じ動作をしていた。
また目と目が合う…さすがにしばらく目線を外せずにいると、先に向こうが正面に向きなおった。
「…それは、この病院の近くなんすか?家賃は?」
佑士の言葉は、今度こそ話が違うと言いかけた俺の口をつぐませた。
「ええ、ここから歩いて10分ほどですよ。後でご案内します。詳細はこちらに書面を用意しましたので…」
再びちらりと横を見やると、佑士は熱心に渡された書面に見入っていた。
やはりほほが赤い。
この男と、二人暮らし?
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