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案内されると確かに職場から近かった。
駅からは離れるが、途中にスーパーや本屋などもあり生活にはまず困る事はなさそうだった。
寮というよりもやはりごく普通の住宅のようだが、以前にも同じように使われていたらしく古いものの家具も一通りそろっていた。
二階建てで、一階に洋室と居間と台所、二階に和室が二間ある。
しかし。
「お風呂てこれしかないんすね」
佑士が言った。
もともと建てられた時には風呂が無かったようで、後から付けられたと思われるシャワーボックスがあるだけだった。
「でも近くに銭湯がありますから。
のんびり二人一緒にでも湯につかれますよ」
…何を言ってるんだこの人は。
笑顔で話す事務局長を横目で見る。
もともと俺はシャワーで十分だ。
誰かと一緒に風呂に入る趣味はない。
「あーそうすねー。
それもいいっすねー」
そんな返事をしたのは佑士だ。
こちらもにこにこと笑いながら…俺を見ていた。
…一体なにがうれしいのだろう?
俺にはよくわからかったが、妙に落ち着かない気分だった。
始めて見た時から、俺はこの小木佑士という男が苦手だった。
平均を上回る身長、体重はゆうに3桁をこえるだろう。
しかしぬいぐるみのような丸々とした顔立ちは、威圧感をきれいに中和している。
可愛らしい、そう言ってもいいだろう。
しかも年を聞いて驚いた。
最初は二十歳そこそこだろうと思っていたが、実は今年で29の俺の二つ下でしかなかった。
…なぜ苦手なのだろう。
自分でもよくわからない。
苦手に思わなければいけない事は特にないはずだ。
今まで寮とはいえ、実際には一人暮らしと言っていい生活をしていたので、とまどっているのかもしれない。
実際よく考えれば、家賃も二人で払うとすれば手頃なものだし、俺にとってはむしろ好都合な話だ…
ふと顔を上げると、佑士がまだ俺を見ていた。
楽しそうな笑い顔のままで。
…やっぱり、苦手だ。
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