話が違うと言いたかった

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「…生田さんは、ぼくと暮らすのん嫌なんすか?」 近くのスーパーで用意したささやかな夕食を同じテーブルで平らげた後。 間がもたずテレビでもと思ったが、まだこの家にはテレビがない事を思い出していると、唐突に佑士が切り出してきた。 じっと俺を見る丸い顔をちらっと見返し、この男はなぜ今日からこの家に泊まるのだろうと思った。 もとから俺は自分の家財はほとんど処分するつもりだから、明日以降にでも身の回りの物だけ運べば良かった。 だが佑士にはまだ帰る家があるはずだろう。 仕事がはじまるまではまだ間があるのに。 「…いや、別に嫌やないですよ。 ただ一人に慣れてるだけで」 と、俺は手に持っていたコップの茶を飲み干した。 このコップはとりあえずとスーパーで買ってきたばかりの物だ。 俺は一つしか買わなかったが、なぜか佑士の手にも同じ柄で色違いの品がある。 「ほな僕が年下やのにそんな敬語止めて下さいよー。 正直、僕色々迷惑かけてまうと思いますんで、なんかあったらゆうて下さいや。 これからよろしくお願いします」 「は、…うん。 こちらこそよろしく」 適当に答え、俺はうつむき手元のゴミをまとめ始めた。 と、そのゴミを佑士はがーっと大きな手で自分の元へとまとめてしまった。 「これくらいは僕しますよー。 それにしても」 言葉を切り、じっと俺を見る。 何だ? 「隆さん、めっちゃええ身体してはりますよね。 なんかしてはるんですか? ジムとか?」 ジム?…ああ、スポーツジムの事か。 しかし、ええ身体? 「いや、力仕事やったから…少し自分でトレーニングしてたし」 それは、俺の数少ない趣味と言っていいだろう。 走ったり球技は苦手だが、昔から力だけはあった。 少しは自信がある。 その自信を維持するため、暇な時は自室で鉄アレイを持ち上げたり腕たて伏せや腹筋などをくりかえす事がよくあった。 身体を動かしていれば、一人でいる事も気にならなかったし。 「へーそうなんすか。 今度僕にも教えて下さいよ。 一緒にやらせて下さい」 …なぜ一緒に。 トレーニングなんて一人でするものだろう。 だがにこにこと笑いかける丸い顔を見ると、俺には小さく、ああとしか答えられなかった。
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