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そのてのひらを、しばらく見つめていた。
あちこちに傷跡が残る、短く太い指。
俺の身体自体と同じようだ。
小さい頃から人よりも背が伸びず、変わりに横幅だけが増えていった。
当然走ったり泳いだり、団体でする運動はへたくそだった。
その上人と関わる事が苦手な性格は、ますます俺を一人にしていった。
だが、俺はむしろ一人でいたかった。
俺よりも社交的で明るくて、その上独占欲の強い兄に生まれた家での居場所を奪われても、それでよかった。
仕事と同時に寮という住家をも失う事になるまでは。
…そして、俺は今着慣れないグレーの背広に身を包み、はじめての道をいそいでいる。
急に降り出した雨に追い立てられ、メモを片手に探していた看板を小走りで目指す。
その看板にはこう書いてあった。
「北山中老年介護病院」
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