41人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
「“ふかよ”って何時からですか?」
ややかん高い声に、その場にいた全員がいぶかしんだようだった。
…しんや、だろう。
手元に配られたシフトの説明に目を落とす。
深夜勤務と書いてある。
何か質問は、と先に言った五十過ぎの看護服の女性―看護部長は、一瞬の間の後ほほえみを浮かべながら答えた。
「この病院には、24時間お客様、いえ患者様がいらっしゃいます。
当然われわれも24時間誰かが居なければなりません。
細かい時間は病棟によって異なりますが、夜間10時以降の勤務に対しては手当が発生します…」
その説明は二度目だった。
ほぼ変わらぬ一度目の説明を聞いていなかったのか、間の抜けた質問をした隣りの男をちらりと見やる。
最初に隣りにその男が座った時から、気にはなっていた。
広い会議室に10人程の人間が集められている。
だがその大半が女性であり、大半が五十代以上であろう。
俺自身もかなり目立っていただろうが、隣りの男は明らかに誰よりも浮いていた。
年の頃はまだ二十歳そこそこか。
明らかに俺より縦にも横にも大きい。
サイズの合わない背広にむりやり身体を詰め込んだようで、いまにも背中の縫い目がほつれそうだった。
頭は丸くきれいに刈られ、落ち着かないのかしきりに汗をぬぐいあたりを見回していた。
最初のコメントを投稿しよう!