「“ふかよ”って何時からですか?」

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 「“ふかよ”って何時からですか?」  ややかん高い声に、その場にいた全員がいぶかしんだようだった。 …しんや、だろう。 手元に配られたシフトの説明に目を落とす。 深夜勤務と書いてある。 何か質問は、と先に言った五十過ぎの看護服の女性―看護部長は、一瞬の間の後ほほえみを浮かべながら答えた。 「この病院には、24時間お客様、いえ患者様がいらっしゃいます。 当然われわれも24時間誰かが居なければなりません。 細かい時間は病棟によって異なりますが、夜間10時以降の勤務に対しては手当が発生します…」 その説明は二度目だった。 ほぼ変わらぬ一度目の説明を聞いていなかったのか、間の抜けた質問をした隣りの男をちらりと見やる。 最初に隣りにその男が座った時から、気にはなっていた。 広い会議室に10人程の人間が集められている。 だがその大半が女性であり、大半が五十代以上であろう。 俺自身もかなり目立っていただろうが、隣りの男は明らかに誰よりも浮いていた。 年の頃はまだ二十歳そこそこか。 明らかに俺より縦にも横にも大きい。 サイズの合わない背広にむりやり身体を詰め込んだようで、いまにも背中の縫い目がほつれそうだった。 頭は丸くきれいに刈られ、落ち着かないのかしきりに汗をぬぐいあたりを見回していた。
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