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音の出ていないイヤホンを…
そのまま耳にいれる……。
「…おいハセ!!そろそろ行こうぜ」
イヤホン越しに聞こえてくる…
聞き慣れない声…
誰かに話かけられるのは面倒だった
自分なりに考えた
一人でいるための方法だ………。
教室の中は息苦しくて
それでも他に行く場所なんて何処にもなかった…
だから…いつもこうやってイヤホンをつけたまま…
ずっと窓から外を眺めていた…
友達なんていない
作る気さえ…到底ない。
軽く腰にかけた制服のズボン…
だらしなくポケットに手を突っ込んで
うつ向きながら歩いていた…。
親元を離れ…祖父母のいる長野へ
気がつけば勝手に手続きは進められ
古びた県立高校へと転校した…。
すれ違う廊下…
周りから不思議な目で見られているような気がして…
全てが気に入らなかったから…
すれ違う人々を睨み付けるようにして歩いた…。
冬休み明けの初日に…
「転校してきた 月岡圭吾(ツキオカケイゴ) 君だ。」
見るからに厳しそうな担任にそう短く紹介されてから…
一週間が過ぎた。
同じクラスでも
話したことのあるやつは…
数えるほどもいないだろう…。
イヤホンをつけ直して
大きなあくびをした…
今日もまた…
つまらない一日を終え清掃にも顔を出さずに帰宅路につく…
空もまた…
憂鬱さを映し出すような
そんな…色をしていた…。
大きな空に手を伸ばしてみる…
まるで助けを求めるかのように…
高く…
ずっと高く………
暗い曇り空の下…
冷たい風が…通り抜けた………
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