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―――――――……
生徒達の勘違い。
千早は男じゃなく女だと判明した後は、これと言って事件はなかった。
千早の雰囲気は空気を和ませるのか、クラスにはすぐ馴染めて、誰にも相模の制裁が下されることはなかった。
休み時間のたびに男女関係なく千早の席に集まったが、本人は嫌がることもなく応対していった。
たまに、やはり眠いのかぼーっとすることはあったが。
昼休み。
千早はある女子の集団に誘われて昼食を食べていた。
女子生徒は弁当や購買で買ったものだったが、千早は登校途中で買ったらしいコンビニのパンだった。
今千早は両手で焼きそばパンを持ってもそもそと食べている。
「ちーねこ君はコンビニパンなんだ。」
千早の食事風景を見ていた生徒が不思議そうに言った。
ちなみに、千早のあだ名はちーねこ君で定着した。
女の子でもちーねこ『ちゃん』というのはなんとなく合わなどという意見があったからだ。
あだ名に頓着しない千早は『君』でも構わないと寝惚け眼で言ったため、決定した。
そして、先程の性別を間違えた事件は、千早が女の子らしくない飾り気もない格好だったため、大半の者は男の子と勘違いしたらしい。
ならもっと女の子らしくした方がいいのかと千早がみんなに尋ねたら、それがちーねこ君らしいし、間違えたこちら悪いという話になった。
とにかく、千早は早くもクラスの一員と認められたのだ。
女子生徒に言われて、千早は食べるのを一旦やめておもむろに口を開いた。
「…今日は、急いでたから。……でも、これからは自分で作るように、する。」
「そうなんだ。ちーねこ君は料理が得意なんだね。」
「……得意かどうかは、わからない。…だけど、作るのは、好き。」
「なるほど。それじゃあ、ちーねこ君の好きなものってなに?」
別の生徒が千早は訊いた。しばらく、千早は目を伏せて考え込んだ。
「…………手作りの、料理。」
「だったら、嫌いな食べ物はないの?」
この問いには千早は首をゆるゆると振って否定した。
この話題が皮切りになって、自分の好きな食べ物嫌いな食べ物の話で盛り上がった。
焼きそばパンをもそもそと食べる千早は、たまに話に参加する程度だったが、女子生徒達は気を悪くすることもなかった。
この感じがちーねこ君らしいと、すでに暗黙の了解が成立していた。
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