豊葦学園

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  「ね、ちーねこ君はこの学園のわからないことっていうか、決まらないことある?授業が追いつかないとか、選択科目でどれにするか悩んでいるとか。」   思い出したよう言われたことに、千早は小さく大丈夫と答えた。   職員室で担任の相模から色々説明を受けたから、期末テストが近いことも、選択科目のことも千早は聞いていた。 だから、わからないことも悩むこともなかった。   「そっか、選択科目は決まってるの?」   こくりと、千早は頷く。   「勉強は大丈夫?」   また千早は頷いた。 すると、周りからおーと声が上がる。   「すごいね、ちーねこ君。一応ここそれなりの名門校だから、勉強は難しいって言われてるんだけど。」   「実はちーねこ君って頭いいのかもね。」   「いやいや、頭よくないとここの編入試験通らないって。」   「……予習すれば、そんなに難しくないよ、ここ。」  千早の言葉に、ちーねこ君は勤勉だねーと感心のため息があちこちから漏れた。  「なんか、ちーねこ君は学園にもクラスにも馴染むの早いね。あたし達が助言することないや。」   「あっ、じゃあさ。」   少しばかり身を乗り出して、ある女子生徒が言った。  「部活は決まってる?」   「…………部活…?」   こてんと、千早は首を倒した。 様子からして、まったく考えていなかったらしい。   これ幸いとばかりに、女子生徒達は話し出した。   「そうそう。ここは部活強制じゃないけど、部活には力入れてるんだよ!」   「ちーねこ君、決まってないなら是非美術部に!」   「ちょっと待った!テニス部は随時部員募集中だよ!ちーねこ君どう!?」   様々な部活の部員らしい女子生徒達に詰め寄られたが、千早はかぷり焼きそばパンを食べてあまり反応しない。   「もしかして、ちーねこ君部活興味ない?」   「……ないってわけじゃ、ない。ただ、考えてなかった。」   女子生徒達の中で比較的落ち着いた者が、ふーんと相槌を打って弁当のおかずをぱくりと食べた。   「うーん。部活はたくさんあるからなぁ。」   たくさんの部員の勧誘の声を背景に、ほのぼのと会話は進む。   「むー…。…あっ。」   何か思い出したのか、ぽんと掌を合わせる女子生徒に千早は視線を向けた。   「有名な部活があるよ。」  「……有名?」   「そ。人気なのもあるけど、入部するのが特殊な部活があるんだ。」     ――――――――……  
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