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「じゃあな」
そのような事を言われた気がする。
でも、一体どういう意味なのか理解出来ない。
そもそも、今の私は動く事が出来ない。
目の前で起きた事なのに信じられなかった……
それは余りにも衝撃的だった……
突然、ヴィンセントの残っていた腕がストンと落ちた。何の前触れも無く。
それだけでも充分衝撃的だったけれど、私をいまだに硬直させているのは、その後に起こった事が原因。
断面から噴き出したのは深紅の血。じゃない。
噴き出したのはなんとエメラルド色に輝く0と1。
無数に飛び出したソレは、瞬く間にヴィンセントの腕を元通りにしてしまった。
気が付いた時、ヴィンセントはすでに部屋にはいなかった。
私が硬直していたのは本の一瞬の筈。
普通に考えれば、扉を開けて廊下を歩けば簡単にヴィンセントに会える。
けれど、その時私は何故か分からないけれど、とても嫌な予感……とでも言うべき何かを感じた。
それはまるで、今会わなければ、二度と会えないのでは?
と、私に囁く気がした。
だから、私は走った。
──……
「はッはッ…はァ。
ヴィンセント―――!」
まだ体力が回復していないらしく、急に走ったせいか肺が酸素を求めて激しく抗議していても、私は心の底から叫んだ。
でも、返事は……無かった……
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