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「ん?」
「キャ!」
通りを曲がって脇道に入った途端にウシズクさんがいきなり立ち止まるものだから、勢い殺せず私の顔はウシズクさんの背中に激突。
まだ痛みの残る鼻を擦りながら、何が在ったのかとウシズクさんの方を見ると、なんだかウシズクさんの雰囲気が何時もと違う。
何と言うか……普段は緩々のゴムをピンとまるでワイヤーのように張り詰めたような、触れるだけで切れてしまいそうなくらい鋭い緊張感を出している。
「そろそろ来ると思ってやしたよ。
此処なら、他に被害は出やせんよ」
廃ビルと廃ビルに囲まれ、日の光がほとんど射し込まず薄暗い路地裏。
なんだか見るからに危なそうな場所で、ウシズクさんは誰も居ない虚空に向かって呟いた。
……と思った。
「ヘヘヘェ~いい覚悟だ」
廃ビルから下品た太い笑い声がした。
それを合図にするかのように、周りのビルや扉、あちこちから人が沢山出て来て、私達はあっという間に進路も退路も防がれる。
その数……100人は超えていると思う。
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