眠る記憶

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私はちょっと特殊な家庭で育ったのかもしれない。 そう思ったのは最近になってからなのだが… 自分の価値観を押し付ける父 それに従うだけしか存在意義を与えられない母 そのせいか他人と関わるのを酷く怯え 体裁ばかりを気にして… いつの間にかノイローゼで自殺したのは二年前のこと。 狂ったように何かに一生懸命に謝罪していた。 私には何も出来なかった。 3つ上の姉は高校を卒業と同時に県外で一人暮らしをしている 私は二番目だから何も言われずに社会人になると同時に家を出た。 小さい頃は姉にばかりくっついて遊んでいた 親友と呼べる友人は少ないが、それなりに学生生活は楽しかった…と思う。 父は私を「お前」と呼ぶ。 いや そうよばれていた…と言うのが正しいのか? 今はどこで何をしているのかもわからない。 母が死んでからは自暴自棄になったりして酒やタバコに溺れていたのをうっすら覚えている。 そんな父を子供心に哀れに思ったりもした。 …自分がここまで薄情な人間だったかと自嘲気味にため息をついて、やかんが鳴る音にハッとした。 朝ご飯は専らパンとミルクティ。 焼くだけ沸かすだけというなんとも質素ないつもの見慣れた朝食だ。 冷蔵庫からミルクを出しレイラの器に盛ってそれをソファーのまえに置く。 「いただきます。」 いつもの朝がはじまった。
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