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「じゃあ…」
険悪な空気を変えたのは洋介だった。
顔の向きは変えないまま、照れくさそうな2人。
「…洋介でいいよ」
「………。」
「その代わり、オレは智子って呼んでいい?」
数秒ほど、沈黙が流れる。
その空気が恥ずかしくて、洋介は少し智子から離れるように歩いていった。
「…いいよ」
「え?」
「決めた。そうしよ、私達、そうやって呼び合お」
久しぶりに目を合わせると、2人は微笑み合った。
72センチ離れた高さでも、その絡み合う視線は何だか揺るぎなく思えたのだ。
彼女が僕を見上げると、なぜか心が日焼けみたいにヒリヒリした。
何度も、何度も。
そしてこの恋は、僕らの過酷すぎる運命と共に始まったんだ。
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