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「でも彼、プロ野球選手でしょ?
だったら……」
「アナタの事が好き?」
まさか、と半分は冗談めいて笑顔を作りながら、顔を赤らめる智子。
「吉美、11時から本屋のバイトだよね?
もう、10時回ってるけど」
「あっ!やばい!
じゃあ私、行ってくるわ」
吉美は焦りだし、急いでカバンに荷物をしまい始める。
その途中、青い無地のハンカチがぽとりと床に落ちた。
「あ、そうだ…」
吉美は不適に笑い出す。
「これ、松永さんの。
借りてたから、智子、返しといてよ。」
「え!?ちょっと!?」
吉美はそそくさと部屋を出て、車椅子では入れないドアの隙間を作り、智子を覗き込んだ。
「ちゃんと、自分の携帯も教えなよ。」
それだけ言うと、吉美はドアを閉める。
下の階で同居中の叔母に挨拶する吉美の声を聞きながら、智子はただ、渡されたハンカチを見つめていた。
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