夏の終わりに。

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出発は早朝 AM4時 深夜と言ってもいいくらいの闇の中 海を目指す 道のりは長い 知らない間にうとうとしてて 目が覚めたら もう夜明けだった 薄い群青色の朝の空気の中 車は海岸沿いをひたすら走る 椰子の木の隙間から 海が見える 陽が高くなるにつれ、海面に光がこぼれて きらきら反射する 車を停めて ガードレールの間の 舗装されていない道を駆け降りた その先は 砂浜 海への近道 潮の匂い 板に塗るワックスのココナッツの匂い 目を閉じてても光を感じるくらい 太陽を遮るものは何もなくて 瞼が熱い 灼けた左腕にお揃いの貝殻のブレス 海から上がった彼と ふざけながら浴びた ポリタンクの中のなまぬるい水の感触 海に点々とサーファーたちの頭が浮かぶ 波の上を滑走する彼を見ている時の ほんの少し 取り残されたような気持ち 砂に木の枝で どうでもいいような絵を描いては消した 捨てられたゴムタイヤ 壜 貝殻 海と空の境目には 水平線が伸びてた 波が岸に打ち寄せる 水泡がはじけて消える その音 何もかも この目に 耳に 鼻腔に 記憶に 残しておきたいって思った 二度と同じ夏は来ないこと 知っていたから
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