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「チャンス?どういうことだ?」
僕はこのことを話してもいいのだろうか…。
死ぬ間際の彼の決心や思いは固かった。
それを揺るがせてしまうのではないだろうか。
彼は任務で近づいたカトレアを愛し、彼女に嘘をついて第3の地球へ逃がし、天界の陰謀で処刑された。
全てを解っていながら全てを受け止め死んだ彼に、ここで今…僕が3つの選択を言い渡したなら、彼はどうするのだろう。
平行時間世界の彼女には逢えるだろうが、そこがどうなっているかは僕にはわからない。
それにどちらにせよ彼は平行時間世界へは戻らないだろう。
そして時計の針を戻してもやはり戻らないだろう。
この部屋に来る魂は皆…戻りたい、帰りたいという気持ちを持つ魂ばかりだ。
そぅ、だからこそノスタルジックを届ける僕達のこの部屋に現れる。
しかし彼は…戻らないと覚悟をして死を選び別れた。
以前来た高木幸恵のように死を理解していなかった場合は別だが…。
なら何故この部屋に来たのだろうか?
「アベル?」
「…あぁ、すみません。
1つめは…平行時間世界に行き、再び人生を送る。
その場合…代償としてその世界のアナタの魂を貰います。
そして永遠に生まれ変わることができません。
2つめは時計の針を戻します。
しかし過去を変えることも、人を殺めることもできません。
そしてアナタの死亡時刻が再び来たとき…どんなに足掻こうと、アナタは死にます。
3つめはそのままあの世へ向かう。
2つめと3つめは代償は頂きません。」
シルヴィエルは少し困ったようにため息をついた。
「…悩んで頂いてかまいません。
アナタが此処にいる限り、他の魂が訪れることはありませんから…。」
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