§ 天使の魂 §

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しばらくするとシルヴィエルは口を開いた。 「少し…遠くから彼女を見たい。 それは不可能だろうか?」 「…すみません、それはできません。 あくまでこの3つのうちのどれかから選ぶしか…。」 自分がどれほど残酷なことを言っているのかは知っている。 しかしこれ以外にない。 今までもそうしてきた。 が、ここまで全てを受け入れて死を選んだ者はいなかった。 だから…余計に悲しくもなった。 僕は感情が無いわけじゃない。 余計な感情を捨ててしまえれば…どれだけ楽だろうか。 「…そうか、ならば俺はあの世へ向かおう。 できるなら…彼女の現状を知りたかっただけだ。 俺は酷く彼女を傷つけてしまったから…。 …彼女が今いる場所が、彼女にとって良い場所であるか…知りたかったんだ。 今更姿を見せる必要もないし、過去に戻り何かをする必要もない。 平行時間世界の彼女は彼女であっても俺の知る彼女ではない。」 「…アナタの知るカトレアさんは…今アナタをとても思っていますよ。 アナタの送った第3の地球は、彼女にとってとても良い場所です。 …お子さんもいらっしゃいます。 アナタと同じ銀の髪、黄金の瞳の女の子が。 それでも彼女は…」 アベルは言いかけたが、すぐにシルヴィエルが上から言葉を被せるように喋り始めた。 「カトレアは…弱くはない。 俺が居なくても大丈夫だ。 …そうか、子供が…。 それだけわかれば充分だ。 ありがとうアベル。」 僕が言いかけたことを彼は悟っていたんだ。 彼女は今子供のために強くあろうとしてはいるが、本当は彼を必要としていて、心の奥底でとても悲しんでいる。 …それを伝えたところで…僕はどうするつもりだったのだろうか。 何もできはしないのに…。 「…アベル、1つ聞きたい。 平行時間世界は時間が同じように進んで、周りの人も同じように存在してはいるが、微妙に行動や未来が異なると説明で言ったな。 …もう1つの世界の人間が死んだ場合、同じようにこの部屋に魂は来ることがあるのか?」 「…いえ、アナタは最初来たときに僕の説明で、どちらが表でどちらが裏なのかわからないのかと言いましたが…アナタの知る世界が表と思ってもらって結構です。 平行時間世界はあくまでここでの選択の為の゛予備世界゛にすぎません。 しかし魂は紛れもなく自分自身のものです。」 §
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