§ nostalgic §

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「アベルさん…私はあの世に行きます。」 「…本当に…それで良いのですね?」 当たり前よ。 次に生まれ変わることが出来たなら… そのとき私はまた由香のママになって、孝明さんとも出会うわ。 例え覚えてないとしても…魂は覚えているはずだから。 そう信じたいから…。 「ええ、そうするわ。決まりよ。」 「では…コレを飲んで下さい。 目が覚めたとき、アナタはあの世にいるはずです。」 「…一つ聞いてもいぃかしら?」 「…?何ですか?」 「アナタは…何故此方にいるの?」 「…何故でしょうね…。」 聞いてはいけなかったかしら…すごく…寂しそうな顔をして微笑んでいた…。 ああ…なんだか眠くなってきたわ…。 その直後、高木幸恵の魂はあの世に向かった。 またこの椅子に座る人形に次の魂が入るのも…すぐだろう。 「も、しゃべていぃ?」 ポロはアベルに言われて喋るのを我慢していたが、事が済んで喋りはじめた。 「いぃよ、我慢させて悪かったね。」 「アベル…だいじぶ?」 「大丈夫だよ。」 ポロはさっき高木幸恵が言った質問について心配しているのだろうな。 …僕が何故此処にいるのか。 それは…忘れてしまった。 あまりに長い時間を此処でこうして過ごしすぎた。 何も覚えていない…。 ポロは覚えているだろうか? 自分が何故此処にいるのかを…。 ポロ…僕は君が来た日を忘れない。 どんなに時が 過ぎていこうとも…。 §
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